だしで学ぶ日本の歴史【前編】

だしで学ぶ日本の歴史【前編】

 

YOHAKU_飲むおだし

YOHAKU :どうも、YOHAKUです。

今回は、先日の蔦屋家電での「飲むおだしのワークショップ」で講師を務められた、 (株)マルハチ村松 大石氏に、かつお節やだしの起源についてお話を聞いてきましたよ。

なんでも、かつお節は歴史と深く関係しているそうで...。
それではどうぞ。

ヨハハ ~

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かじって食べていた?! 「節」の元祖

YOHAKU : どうして、こんなにも手間暇かかった「節」が発達したんですか?

大石氏 :むか〜しむかしの人々が、おさかなの保存性を上げるために「いぶし固めた」こ とがきっかけと言われています。今日私たちが目にするカチカチに固い節は、戦国時代くら いに「兵糧食」として利用されていたものがその原型と言われています。かつおの身を焙乾 していぶし固めれば腐らないし、栄養価も高いし、調達もしやすい。当時はそのままかじっ て食べていたようですよ。

江戸時代初期になると、上方(関西)でかつお節とこんぶを組み合わせる調理法が浸透してきます。節を「だし」として利用し始めたのもこの頃だと言われています。

かつお節

塗って食べていた?! 「だし」の元祖

だしは、化学調味料も何もない当時の人たちにとってはビックリするくらいおいしかったんでしょうね。江戸時代中期以降になると、江戸(東京都)でもおいしいかつお節を食べたいということになってきます。ただ、当時の節の産地だった紀州藩(和歌山県)や土佐藩(高知県)から運ぶ際に、それまでの技術では途中でカビてしまうんですね。そこからカビ付けの技術が発達し保存性が高まることになります。 このようにして、かつお節の生産技術が高まっていきました。

ちなみにかつお節の元祖としては、平安時代の「租庸調」という租税制度で地域の名産品を朝廷に献納する際、「かたうおいろり」や「かつおいろり」というかつおの煮汁を煮固めたものやおさかなを煮て干した「にかたうお」が税金として納められていたという記録が残っています。

「かたうおいろり」はややペースト状のしょっぱいものでかつおの風味があり、調味料として使われていたようです。そういう意味では、これがだしの元祖と言えないことはないですね。

YOHAKU :ほうほうほう。いぶしてかじるのも、塗って食べるのも、おいしそうだなぁ。

いくつもの産地を転々と。

YOHAKU :「節」はどのへんで生まれたんですか?

大石氏 :平安時代の租庸調で「にかたうお」をたくさん献納していたのは駿河国(静岡 県)のあたりです。戦国時代では、紀州藩でいぶし固めたかつお節の原型が生まれ、土佐藩 で花開きました。

幕藩体制だった江戸時代は門外不出の秘伝の技術としてかつお節の製法は外に漏らしてはいけなかったのですが、幕末の頃、紀州出身のかつお節職人である「土佐与市」が伝播して技術を伝承し、いろんな地域に広まったと言われています。

そのあと、明治維新の前後に各地域で技術開発競争が起こり、「第四回内国勧業博覧会」で
静岡県・焼津が有効一等賞を受賞して、かつお節の産地に発展していきました。

また、一説によると「モルディブフィッシュ」の製法が沖縄を経由して本州の方にもたらされたんじゃないかってことを言っている人もいます。「モルディブフィッシュ」とは、インド洋のモルディブで作られているかつお節によく似たものです。

沖縄に「ウミヘビ」をいぶして滋養強壮の薬として利用しているものがあるのですが、モルディブから伝わったいぶし技術が沖縄で発展して、本州にきたんじゃないかっていう説もあります。

日本は高温多湿で、周りを海に囲まれていて、食べる物を海からいただいて、それを上手に活用・利用してきました。それをかつお節にまで発展・昇華したことは、やっぱり日本独特のものだなと感じますね。

YOHAKU :なるほどなるほど。諸説あるものの、おいしくなってくれて、ありがたい、あ りがたい。

しょうゆ × だし = 人気爆発

YOHAKU :昔は、だしは超ぜいたく品だったんですって?
大石氏 :そうなんです。これだけ手間暇かけて加工したおさかなを食べるときに煮出すだ けなのはとんでもなくぜいたくな食べ物ですよね(笑)。こういうものがあること自体が、 よくよく考えるとすごいことだなと思います。

節がだしとして、昆布と一緒に使われるようになった江戸時代初期の頃は、なかなか食べるものがなかった時代。かつ、かつお節自体が高級食材だったので、だしをとる使い方は非常にぜいたくで、庶民の間で日常的に行われていたわけではないと思われます。

ちなみに、しょうゆも高級品でした。そんなしょうゆを使って具材を煮るなんていう料理法も、当時は相当なぜいたく品だったと思われます。

徐々にしょうゆが普及してくると、先程お話ししたペースト状の「かたうおいろり」がなくなってきちゃいます。その一方で、しょうゆが大量生産されて汁もの料理が出てくると、「にかたうお」(煮て干したおさかな)が発展したかつお節が、いよいよ日常的に「だし」
としてしょうゆと一緒に使われるようになってきます。

YOHAKU :しょうゆと出会って、だしの人気が爆発したんですねぇ。

▼ 詳細が気になった方はコチラ(別ページが開きます)
https://www.kikkoman.co.jp/soyworld/subete/history.html

そしてだしは地域の味になっていった

YOHAKU :日本津々浦々、だしの使い方の違いってあるんですか?

大石氏 :うどんやお蕎麦でご紹介したらわかりやすいかもしれません。たとえば讃岐うど んが知られている瀬戸内海はいわし漁業の先進地域なのでサイズの小さないいいわしがたく さん獲れます。小さいいわしは脂がのってませんから、煮干しにしてだしにするとおいしい んです。そうして讃岐うどんのおいしいだしができるんですね。

九州の北部も実はうどんどころなんですよ。特徴的なのは、あじの煮干しを使っているところ。

大阪だと昆布とかつお節が歴史的にはメインなんですが、うどん屋さんではうるめいわしを使ったりしています。関西では地域の好みに合わせてだしの原料をチョイスして使っている印象です。

関東では蕎麦文化になりますが、東京の蕎麦屋さんは大概、かつお節と一緒に、そうだがつおを原料とした宗田節を使ってらっしゃいます。濃口醤油のしっかりとしたしょうゆの強さがあるので、あっさりめのかつおのだしだけではパワーが足りないのかなと。宗田節の方が少し深みのあるだしっぽい感じがありますから、併用してお使いになっているところが多いです。

かつお節

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YOHAKU_Dripのむおだし

YOHAKU :だしの取り方も色々あるんですねぇ。今日から、うどんやお蕎麦の味わい方が 変わりそうだな。

今回は、このくらいで一休み。次回はもうすこし踏み込んだお話を聞きますよ。

それでは皆さん、おたのしみに。

ヨハハ ~
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